小型化と大電力に対応するSiC MOSFET
ローム株式会社が新たに発表したSiC MOSFETのTOLLパッケージ「SCT40xxDLL」シリーズが、ついに量産を開始しました。この新製品は、従来のTO-263-7Lパッケージ品と比較して、耐圧やオン抵抗が同等でありながら、放熱性が約39%向上しています。このため、コンパクトながらも大電力に対応可能であり、特に高電力密度が求められる産業機器や薄型電源に適しています。
新製品の特徴
ロームの新しいSiC MOSFETは、部品面積を約26%削減し、厚さはわずか2.3mmまで低背化されています。これにより、従来のパッケージ品に求められるスペースを大幅に削減することができ、特にスリムなデザインを必要とするアプリケーションにおいて非常に魅力的です。また、一般的なTOLLパッケージ品の多くが650Vの定格電圧である中、ロームの新製品は750Vに対応しており、これによりサージ電圧への適応力が高まると同時に、ゲート抵抗を抑えることでスイッチング損失を低減することが可能となります。
ラインアップと価格
「SCT40xxDLL」シリーズのラインアップは、13mΩから65mΩのオン抵抗を持つ6機種が用意されており、2025年9月から量産が開始されます。サンプル価格は税抜きで5,500円からスタートします。インターネットでの購入も可能で、コアスタッフオンラインやチップワンストップなどのサイトから手軽に入手できます。また、新製品のシミュレーションモデルもロームの公式ウェブサイトで公開されており、迅速な回路設計が行えます。
開発の背景
現在、AIサーバーや小型PVインバータなどでは、大電力化と小型化という相反するニーズに応えるべく、パワーMOSFETの高電力密度化が急務となっています。特に「ピザボックスタイプ」と称される薄型電源向けのトーテムポールPFC回路では、厚さ4mm以下という厳しい基準が求められます。これに応える形で、ロームは従来の厚さ4.5mmを大きく下回る2.3mmのTOLLパッケージを実現しました。
応用分野
新たなSiC MOSFETは、AIサーバーやデータセンターの電源、PVインバータ、電力貯蔵システム(ESS)など、さまざまな産業機器に幅広く応用される予定です。また、一般電源としても使用され、今後ますます多くの分野での採用が期待されています。
EcoSiC™ブランドについて
ロームのEcoSiC™ブランドは、シリコン(Si)を超える性能を誇るシリコンカーバイド(SiC)素材を利用したデバイス群で成り立っています。ロームは、ウエハ製造から製造プロセス、パッケージング、品質管理に至るまで、独自の技術を駆使してSiCの進化を推進しています。これにより、SiC分野におけるリーディングカンパニーとしての確固たる地位を築いています。
結論
ロームの新たな「SCT40xxDLL」シリーズのSiC MOSFETは、その小型化と大電力対応の両立により、未来の電源設計や産業機器に革新をもたらすことが期待されます。これからもロームの最新技術に注目していきたいものです。