トヨタ財団助成に採択された地域医療プロジェクトの全貌とは

トヨタ財団50周年記念助成を受けた新たな挑戦

2023年、公益財団法人トヨタ財団の50周年を記念して実施された助成プログラムに、一般社団法人関西ヘルスケアサイエンスインフォマティクスが提案したプロジェクトが採択されました。このプロジェクトの名称は「デジタル技術に支えられるコミュニティおよび循環で維持される未来の持続可能な地域医療・健康モデルの探索」であり、医療と地域社会の融合を目指した先進的な取り組みです。

プロジェクトの背景と目的

現在、地域医療は様々な課題に直面しています。特に、人口減少や高齢化に伴う医療人材の不足、そして地域格差が大きな問題です。このプロジェクトでは、デジタル技術と地域の自律的な取り組みを融合させ、安心して健康に暮らせる社会の実現を目指しています。具体的には、以下の4つの柱を軸にしています。

1. 地域密着型の社会的処方 × DAOによる支援循環

この取り組みでは、岩手県紫波町の「畑多楽園」をモデルに、DAO（自律分散型組織）を活用した地域経済の仕組みを構築します。地域住民が主体的に健康行動を取ることを促しつつ、持続可能な運営と意思決定を両立することが狙いです。

2. VRゲームで学ぶACP（人生会議）の普及

延命治療や終末期医療に関する意思決定を支援するACPを普及させるために、「みんらぼカード」をVRアプリとして再設計します。遠距離にいる家族同士がより良いコミュニケーションを取るきっかけになることを期待しています。

3. 医師が循環する「循環型医療モデル」

宮城県登米市に拠点を置く医療法人社団やまとが実践している「医師循環型モデル」を基に、医師だけでなく地域住民も含めた循環型の医療モデルを推進します。これにより、地域の医療の質が向上し、空白地の解消が図られます。

4. LLMを活用したアナログとデジタルの融合支援

大規模言語モデル（LLM）を用いて、医療とデジタル技術をつなぐ取り組みを行います。デジタルに不慣れな高齢者でも利用できるような設計を施し、情報格差のない地域医療支援を目指します。

期待される波及効果

この研究は、医療・福祉・地域社会に新たな枠組みをもたらすものです。特に注目されるのは、DAOの仕組みを医療分野に導入する試みです。これにより、地域密着型の医療活動の持続可能性が支えられるとともに、医療分野における制度設計への影響も期待されます。さらに、VRやAI技術の導入により、患者の意思決定や地域との対話の活性化が見込まれています。

また、医師が都市と地方を循環することで、地域医療の格差を是正し、暮らしと医療の新たな接点が生まれることが期待されています。公衆衛生や心理学など、異なる分野からの専門家が集まり、新たな知見や解決策が導かれることでしょう。

最後に

このプロジェクトは2025年5月から始まり、さまざまな取り組みが実施されます。関心のある方は、ぜひプロジェクトの進捗をチェックしてみてください。地域医療の未来を形作る一翼を担うこのプロジェクトに、多くの人々が関わることを期待しています。詳しい情報は、一般社団法人関西ヘルスケアサイエンスインフォマティクスの公式ウェブサイトをご覧ください。