マンガの未来を見据えた20年の変遷と新たなトレンド分析
電子コミックサービス「コミックシーモア」は、2023年に20周年を迎える。これは、マンガ市場の激動の20年を振り返る絶好の機会であり、様々な時代背景においてどのような変化があったかを知る良いきっかけとなる。特に、コロナ禍とスマートフォンの普及は、電子コミック市場に大きな影響を与えていることが指摘されている。
1. コミックシーモアの成長の軌跡
「コミックシーモア」は、2004年のサービス開始以来、常に読者のニーズに応える形で多彩なマンガを提供してきた。特に電子コミック市場は急成長を遂げ、作品の表現方法や人気ジャンルの変遷も顕著である。初期のガラケー時代には、手に取りにくいジャンルや内容が多く読まれる傾向があった。
■ガラケー時代(2004~2013年)
この時期、電子コミックの黎明期として、主に携帯電話を通じて作品が配信された。特に人気を集めたのは、官能系やお色気系など、周囲の目を気にせずに楽しめる作品だった。この流れは、多くの読者が従来の書店では手に取りにくかったジャンルに目を向けるきっかけとなった。ランキング1位の『まんがグリム童話 金瓶梅』は、当時の月間ダウンロード数が30万DLを超え、電子コミックのブームは加速した。
学芸員の倉持佳代子氏は言う:「この時期、携帯マンガは一コマごとに楽しむ新たな読書体験を提供しました。書店では手に取りにくい作品が好まれ、需要が高まりました。」
■スマートフォン普及以降(2013年~)
2013年からのスマートフォン普及により、電子書籍プラットフォームが急増。この時期、電子コミック市場は一段と広がりを見せた。無料試し読みやアプリ連動の課金モデルが一般化し、広範囲なジャンルが浸透していく。アニメ化や映画化された人気作品が上位を占めるようになったことからも、電子コミックが多くの世代に受け入れられ始めた。
倉持氏もコメントし、「この時代は、スマホに合わせて作られたボーンデジタル作品が急成長し、ランキングの影響を強く受けたことが特長です。」と語っている。
■コロナ禍以降(2020年~)
コロナ禍の影響で、リモートワークの広がりや外出自粛により、電子コミックの利用者が急増。巣ごもり需要により、電子コミック市場はさらなる拡大を果たす。この時、特に『鬼滅の刃』などの人気作はデジタル購入が急増し、売上は250%の増加を記録した。読み手の世代も広がり、新たなトレンドとして「異世界転生」や「ロマンス・ファンタジー」などが次々とランクイン。
倉持氏は、「コロナ禍の影響でにより、マンガ市場は過去最高の売上を記録し、多様なジャンルが支持されています。」と述べている。
2. 読者データから探る未来のトレンド
コミックシーモアは、多数の読者データをもとに現在の人気ジャンルや今後のトレンドを分析した。その結果、以下の3つのジャンルに注目が集まっている。
■ロマンス・ファンタジーの台頭
特に自立したヒロインを描く作品が人気を集めている。例えば『おひとり様には慣れましたので。婚約者放置中!』は、30代以下の女性から強い支持を受けている。近年、読者は「守られたいヒロイン」よりも、自らの人生を選ぶ「自立したヒロイン」に共感を覚えつつある。
■夫婦問題・復讐ドラマ
家庭内の問題を描いた作品が現代女性の悩みを繊細に描いている。「夫の浮気やモラハラ」といったテーマが共感を呼び、応援しながら「スカッと」する体験を提供する作品が増加。読み手の感情に寄り添った内容となっており、トレンドが続くことが予想される。
■社会的制裁をテーマにした青年復讐もの
SNS時代における復讐という新たなスタイルが注目を集めている。過去のトラウマに対し、言葉や証拠を使った巧妙な復讐劇が描かれ、多くの読者に共感されている。「自らの声を代弁する内容に心を打たれる人が増えている」と言った倉持氏のコメントが印象的だ。
3. 今後の展望
継続的に進化するマンガ市場において、特にAIの進化やグローバルからの影響が今後のフォーマット形成の重要因子になると考えられる。マンガが市場を超え、より広範な価値観を伝える場と思われている。未来は、より明るい展望を期待する。
日本のマンガ文化の魅力を堪能できる京都国際マンガミュージアムは、こうした時代の変化を感じ取るには絶好のスポットといえる。興味深い動向を踏まえつつ、私たちはこれからのマンガの魅力を追いかけ続けたい。