ローム株式会社が開発した新型SiCモジュール
京都に本社を構えるローム株式会社は、電動車向けオンボードチャージャー(OBC)用の新しいSiC(シリコンカーバイド)モジュール「HSDIP20」を発表しました。このモジュールは、高電力密度を実現し、各種電力変換回路に必要な基本機能を小型なパッケージに組み込むことを目指しています。今回の開発により、メーカーは設計工程を効率化しつつ、OBCなどに必要な回路をさらに小型化することが可能になります。
HSDIP20の魅力と特徴
HSDIP20モジュールは、750V耐圧品と1,200V耐圧品の二つのバリエーションを揃え、全13品番そろえています。このモジュールに含まれている絶縁基板は高い放熱性能を持ち、大電力での動作時にもチップの温度上昇を抑えます。実験結果では、一般的なPFC回路において、HSDIP20は従来の上面放熱タイプのディスクリートよりも約38℃低い温度で動作することが確認されています。
さらに、HSDIP20は業界でトップクラスの電力密度を達成しており、上面放熱タイプのディスクリートと比較して、3倍以上の大電流対応が可能です。これにより、実装面積を約52%も削減することができ、小型化を実現します。この技術革新は、ハイパワーアプリケーションに求められる性能を満たすための大きな一歩となっています。
市場のニーズへの応え
近年では脱炭素化の動きが加速し、自動車業界は電動化へと急速に移行しています。そのため、電動車に必要なバッテリーの高電圧化が進んでおり、OBCやDC-DCコンバータにも出力向上が求められています。また、市場からは小型化や軽量化に対しても高い要求が寄せられています。HSDIP20は、このようなニーズを受け、従来のディスクリート構成では達成が難しかった技術課題を解決する製品です。
生産と販売計画
ロームは、2025年の4月より月産10万個の体制でHSDIP20の量産を開始します。サンプル価格は税抜きで15,000円となっており、製造は福岡県のローム・アポロ筑後工場、宮崎県のラピスセミコンダクタ宮崎工場、そしてタイのROHM Integrated Systemsで行われます。サンプルについての問い合わせは、ロームの公式Webサイトを通じて行うことができます。
使用可能なアプリケーション
HSDIP20は、電動車のみならず、多岐にわたるアプリケーションに対応しています。具体的には、OBCやDC-DCコンバータ、電動コンプレッサを含む車載機器や、EV充電ステーション、ACサーボ、サーバー電源といった産業機器においても、その性能を発揮します。この技術の導入により、さまざまな分野での電力変換回路の小型化に貢献できると期待されています。
サポート体制
ロームは、HSDIP20の導入を迅速に進めるため、さまざまなサポートを用意しています。モーター試験装置を備えた専用のアプリケーションサポートや、シミュレーション能力を持った評価キットも揃っており、熱設計の観点からも包括的なソリューションを提供しています。
まとめ
ローム株式会社の新型SiCモジュールHSDIP20は、電動車の技術革新を加速させる重要な要素となることでしょう。小型で高効率な電力変換を可能にするこの製品は、業界全体の進化を促進することが期待されています。今後もロームがどのようにこの技術を発展させていくのか、注目が集まります。