京都大学と日立製作所が描く持続可能な未来
地球は今、かつてない危機的な状況に直面しています。気候変動、生態系の崩壊、経済格差の拡大、さらに紛争や戦争の頻発など、私たちの生活を脅かす様々な問題が山積しています。こうした世界的な問題に立ち向かうため、国立大学法人京都大学と日立製作所は、AI技術を駆使し、持続可能な未来に向けた政策提言を行いました。
AIを用いた政策提言
この取り組みの中心にあるのが、「政策提言AI」または「未来シナリオシミュレーター」と呼ばれる技術です。京都大学の広井良典教授と日立製作所の研究チームが共同開発したこの技術は、294の地球社会に関連する指標を基に2050年までの未来をシミュレーションします。
シミュレーション手法
研究チームは、これらの指標を様々な国際機関のデータと照らし合わせて因果モデルを構築しました。これにより、2050年に向けた多様な未来シナリオを生成し、それぞれの経済や環境、社会的側面でのパフォーマンスを分析しました。結果、提示されたのは7つの未来像です。
目指すべき未来像
2050年に向けて描かれた7つのシナリオは以下のように分けられます:
1.
地域分散・成熟シナリオ(シナリオ1):地域経済が自律的に発展し、国際紛争が大幅に減少。
2.
グリーン成長・協調シナリオ(シナリオ2):経済成長を維持しながらも環境への配慮が求められ、先進国と途上国の格差が縮小。
3.
二極化シナリオ(シナリオ7):経済成長が続く一方で、先進国と途上国間の格差が拡大。
4.
ウェルビーイング・環境配慮不足シナリオ(シナリオ4):人々の幸福度は高まるが、環境は悪化。
5.
経済成長至上シナリオ(シナリオ6):全体的に高い経済成長を実現するが、環境問題は深刻化。
6.
気候・紛争ダブル危機シナリオ(シナリオ3および5):先進国は低成長の一方で、途上国は紛争と環境危機が共存。
7.
破局的シナリオとしての二極化(シナリオ7):経済的利益のみが優先されることによる悪影響が強調されます。
このように、2050年に向けて私たちの選択によって変わる未来の姿が浮き彫りになっています。特に、早急な環境政策が、持続可能な未来を実現する上での鍵となるでしょう。
未来社会のビジョン
どのシナリオが望ましいかは、私たちがどの価値を最優先するかによって異なります。例えば、「地域分散・成熟シナリオ」は経済の成熟を重視し、自律型の安定した地域社会を強調します。一方で、「グリーン成長・協調シナリオ」は国際的な経済の協調性を前提に持続可能な成長を目指すものです。このような多様なアプローチを通じて、持続可能な社会を築くことが求められています。
今後の課題
本研究の実施にあたって、データ収集やモデル構築には課題も残ります。さらなる技術的進化とともに時間がかかる可能性があるため、定期的に見直しを行う必要があります。しかし、この取り組みを通じて、私たちはより持続可能な社会へ向けた議論を深めていくことができるでしょう。2050年に向けた選択の瞬間は、すでに近づいているのです。私たちは今、行動を起こすべき時なのです。
今後、京都大学と日立製作所が共同で実施するシンポジウムや勉強会を通じて、さらなる知識の共有が期待されます。持続可能な未来に向けた道筋を一緒に見つけ出していきましょう。