昭和東南海地震における電離層異常の発見とその意義
京都大学大学院情報学研究科の梅野健教授は、81年前に発生した昭和東南海地震(1944年)の際に電離層に見られた急激な異常に関する重要な発見をしました。この調査は国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が公開した戦前の手書きのイオノグラムデータを基に行われました。
1944年の昭和東南海地震と電離層異常
昭和東南海地震はマグニチュード8.2の大地震で、1944年12月7日に発生しました。この地震の約1時間半前から1時間にわたり、電子数密度が急速に増大していることが観測されたのです。梅野教授は、このデータを解析することで、地震の前兆として電離層の異常が明らかになったと述べました。
戦時中であったため、情報統制が厳重に行われていましたが、今回の発見は近未来の南海トラフ大地震(犠牲者数30万人の可能性)に備えるための貴重なデータとなるでしょう。過去の南海トラフ地震に関する記録は、既に今村明恒博士によってプレスリップが発見されていますが、電離層の異常については今般の発見によって科学的証拠が得られました。
電離層観測の歴史とその重要性
1944年当時、日本には多数の電離層観測装置がありました。戦争下でも観測網が形成され、なおかつ電離層のデータが今に残っています。これにより、科学者たちは過去の地震前の状況を測定することができ、特に今回の昭和東南海地震に関連するデータは、近未来の地震予知に役立つ可能性があります。
公開されたイオノグラムデータは、特に昭和東南海地震当日の電子数密度の急増を示しています。こういった詳細なデータは、現代の観測技術と組み合わせれば、より精密な予知が可能になると期待されます。
今後の展望
梅野教授が示すように、今後の地震予知のためには電離層の異常と地殻変動の両方を捉えることが重要です。高度な観測機器を用いた取り組みが必要であり、リアルタイムデータの収集と解析体制の強化にも力を入れるべきです。さらに、これらの観測データがどのように地震の発生と関連しているのか、物理的な因果関係を解明することも課題です。
京都大学の研究者たちは、地殻内の構成要素が電離層への影響を与える可能性についても研究を進めており、これらの発見が今後の地震対策に生かされることを期待しています。
この研究成果は、2025年12月20日に開催される日本地震予知学会学術講演会で発表予定です。昭和東南海地震の教訓を基に、現代における地震予知の精度を向上させるための取り組みが求められています。