新たなワイヤレスエミュレータ
2026-08-26 14:17:20

無線伝送特性をデジタルツインで評価する新たなワイヤレスエミュレータ開発

5G通信の未来とワイヤレスエミュレータの開発



近年、自動運転や交通安全を追求するための新たな通信技術、V2X(Vehicle-to-Everything)が注目を集めています。この環境における無線伝送の特性を評価するために、国立大学法人京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループは、デジタルツイン技術を活用したワイヤレスエミュレータを開発しました。従来の手法に比べ、屋外実験を行うことなく、実環境の無線伝送特性を正確に評価できるという画期的な成果です。

V2X環境の重要性



V2X環境では、5G通信が活用され、特に5.9GHz帯が用いられています。交差点などの重要な場面で、車両間での情報共有が実現することで、交通事故の防止や交通の流れを円滑にする効果が期待されています。しかし、実際の環境でこれを試験するには、費用と時間がかかり、制作に高いハードルが存在します。

ワイヤレスエミュレータの概要



新たに開発されたワイヤレスエミュレータは、以下の3つの主要部材から構成されています。

1. レイトレーシング電波伝搬シミュレータ部: 3D地図上で、送信機と受信機の位置情報や通信関連情報をもとに、光の経路を追跡する方法で電波伝搬のシミュレーションを実施します。

2. チャネルインパルス応答生成部: レイトレーシング結果を通じ、マルチパス成分から応答を生成します。これにより、エミュレータの計算負荷を軽減しつつ、受信機の移動に伴う信号変動もシミュレートします。

3. フェージングエミュレータ部: チャネルインパルス応答が生成された後、実験室内でこの環境を再現できるように常用のハードウェアフェージングエミュレータに接続します。これにより、実際の屋外実験を省略しつつ、無線環境の評価を行えます。

これらが統合されたソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより、実環境に即したシミュレーションが実現します。

実証実験と評価



開発されたワイヤレスエミュレータの効果を検証するため、研究グループは実際の交差点で屋外実験を行いました。この実験では、5GHz帯の5G NR信号を使用し、受信機を搭載した移動車両でデータを収集。また、受信信号の電力、遅延スプレッド、BLER(Block Error Rate)を比較し、ワイヤレスエミュレータの性能を確かめました。

結果として、受信信号電力や遅延スプレッドは互いに近似していることが確認され、特にBLER特性についてもほぼ同一の受信条件を満たすことが示されました。これは、5G NRシステムの特性を一定の精度で再現できる可能性を強く示唆しています。

今後の展望



このようにして得られた成果は、将来的には無線通信システムの効率的な開発や評価につながります。ワイヤレスエミュレータは、V2X環境における路側機設置の最適化を事前に行うことが可能となり、各種実験環境に応じたシミュレーションが実現します。

さらに、研究グループは2023年8月27日に予定されている電子情報通信学会無線通信システム(RCS)研究会で本成果を発表する予定です。これにより、さらなるフィードバックを受け、システムの改良や実用化に向けた道が開かれることが期待されます。

本研究の詳しい内容は、京都大学の公式ホームページでご覧いただけます。 詳しくはこちらをクリック

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