ローム株式会社、先進的な絶縁ゲートドライバICの量産開始
ローム株式会社が新たに発表したのは、600Vクラスの高耐圧GaN HEMT駆動に最適な絶縁ゲートドライバIC「BM6GD11BFJ-LB」です。この製品は、GaNデバイスの特性を最大限に引き出し、モーターやサーバー電源などの大電流アプリケーションにおいて高周波・高速スイッチングを安定的に行うことが可能です。これにより、大型機器の小型化や高効率化にも寄与し、今後の省エネ社会の実現に向けた重要な技術となります。
新技術で実現した高効率・安定性
この新製品は、ロームが初めて開発した高耐圧GaN HEMT向けの絶縁ゲートドライバICであり、スイッチング動作においてデバイスと制御回路を分離する独自のオフチップ絶縁技術を採用しています。この技術により、急激な電圧上昇や下降への耐性が向上し、安全な信号伝送が実現されています。特に、最大2MHzの高周波駆動が可能であり、アプリケーションの省エネ化だけでなく、周辺部品の小型化と実装面積の削減にも寄与します。
さらに、コモンモード過渡耐圧(CMTI)は従来品の1.5倍、150V/ナノ秒(ns)を実現。高スルーレートによる誤動作を防ぎ、安全性と安定性を確保しています。また、最小パルス幅は従来品比で33%縮小され、オン時間が最少65nsに短縮されています。これにより、高周波化した際でも最小Duty比を維持し、損失を最小限に抑える設計となっています。
多様なアプリケーションへの適用
今回の絶縁ゲートドライバICは、GaNデバイスのゲート駆動電圧範囲が4.5V~6.0V、絶縁耐圧は2500Vrmsで仕様されています。この製品はロームのEcoGaN™シリーズに新しく追加されており、650V耐圧GaN HEMTである「GNP2070TD-Z」を含む、さまざまな高耐圧GaNデバイスに対応しています。そのため、ロームの新しいソリューションは、省エネ性の向上とともに、民生機器や産業機器においても幅広い適用が期待されています。
業界トップクラスの低消費電力性能を実現したこの新製品は、出力側の消費電流を最大0.5mAに抑えており、待機電力の削減にも寄与します。量産は2025年3月より開始され、サンプル価格は600円(税抜)です。現在、コアスタッフ™オンラインやチップワンストップ™などのインターネット販売でも手に入れることが可能です。
バックグラウンドと今後の展望
世界的にエネルギー消費が増加する中、省エネ対策はますます重要となっています。特に「モーター」や「電源」は、全世界の電力消費の約97%を占めるため、効率改善が求められています。この需要を背景に、ロームはSiCやGaNといった次世代パワーデバイスに焦点を当てた絶縁ゲートドライバICを開発しました。
今後、GaNデバイス駆動用のゲートドライバICをAIデバイス製品と組み合わせて提供することにより、アプリケーション設計の容易化にも貢献する予定です。これにより、さらなる省エネ・効率化が期待されています。毎日の生活に不可欠な電力供給の効率を劇的に向上させていくロームの取り組みに、これからも要注目です。