腸内細菌とHYAの新発見
2025-04-22 17:23:28

腸内細菌が生み出すHYA、1型糖尿病の治療に新たな道を示す

1型糖尿病モデルラットとHYAの関係



最近の研究で、腸内細菌が生み出すHYA(10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid)が、1型糖尿病モデルでの食後高血糖を改善する可能性が示されました。和歌山県立医科大学の山本悠太講師を中心に、北海道大学やNoster株式会社の研究者たちが協力して行ったこのプロジェクトは、腸内環境が血糖値に与える影響を探る画期的な試みとなりました。この研究は2025年4月22日に発表され、多くの注目を集めています。

研究の背景



糖質を含む食品が消化されると、体内でグルコースに変わり、これが血液中に吸収されます。通常、血糖値が上がると膵臓からインスリンが分泌され、血糖値が一定のレベルに保たれます。しかし、1型糖尿病の患者では、インスリンを分泌する細胞が破壊されてしまい、外部からインスリンを補充する必要があります。このため、食後高血糖を防ぐ治療法が求められています。

本研究では、腸内に存在するリノール酸が、腸内細菌によって代謝されHYAに変化するプロセスを重点的に調査しました。HYAは、リノール酸の特定の二重結合が酵素によって変化したもので、内因性の抗炎症効果を持ちます。このため、長期の使用にも耐えられる新たな選択肢として期待が寄せられています。

研究の成果



研究チームは、HYAを経口投与した後に行った経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を通じて、以下の結果を得ました:

1. 血糖値の抑制:正常ラット及びT1DMモデルラットの両方で、HYAは食後の血糖値上昇を抑える効果を示しました。

2. 腸管ホルモンの分泌促進:HYAを投与することで、GLP-1やCCKと呼ばれるホルモンの分泌が増加し、胃の排出速度が遅くなることが確認されました。このプロセスが、急な血糖上昇の抑制に寄与しています。

3. 糖吸収の制限:HYAは腸の細胞にあるSGLT1という糖輸送体の活動を妨げ、糖の吸収を減少させる可能性があります。

4. インスリンとの併用効果:T1DMモデルラットへの試験では、食直前にインスリンを注射し、HYAを経口投与することで、食後の血糖コントロールがより良好になったことが見られました。

未来への期待



HYAの持つ特性は、1型糖尿病の治療に新たな可能性をもたらすと考えられています。これまでの治療は、インスリンの分泌促進に焦点を当てていましたが、HYAのような新たな代謝物が持つ多様なメカニズムは、より効果的な治療法の開発を促進します。1型糖尿病の患者にとって、食後の高血糖をより効果的に管理するための手段として、HYAの利用が期待されます。

この研究成果は、科学雑誌「Acta Diabetologica」に掲載されており、さらなる詳細については同誌を参照してください。

研究チームに関する情報



本研究は、和歌山県立医科大学及び北海道大学の研究者に加え、Noster株式会社が協力して行っています。Nosterはバイオ医薬品や機能性食品の開発に力を入れる企業で、今後も革新的な研究を進めていくことが期待されます。さらに詳しい情報は、Nosterの公式ウェブサイトをご確認ください。

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