ICTを活用した心不全モニタリングプロジェクトの成果
京都府向日市に本社を構えるオムロンヘルスケア株式会社と、京都府立医科大学大学院医学研究科の医療チームが取り組む「在宅における心不全ICTモニタリングプロジェクト」が、この度実証調査を無事に終えました。このプロジェクトは、ICT(情報通信技術)を用いて心不全患者の状態をモニタリングし、早期の治療介入につなげることを目的としたものです。
プロジェクト概要
この実証調査では、心不全患者が自宅でオムロンの心電計付き上腕式血圧計や通信機能付き体重計を用いて日々のバイタルデータを計測し、そのデータをスマートフォンアプリ「OMRON connect」を通じて医療機関と共有します。これにより、医療従事者がリアルタイムで患者の状態を把握し、必要に応じて介入できる体制を整えました。
このプロジェクトでは、看護スタッフが日々のデータを確認し、心不全の増悪の兆候が確認できれば患者にコンタクトし、受診を促すという仕組みを導入しています。実際に、21名の心不全患者中、11名の症例において心不全増悪の初期サインを捉えることに成功しました。
驚きの結果
驚くべきことに、3ヵ月間における計測の継続率は90%を超え、利用者の86%が診療に対して「非常に満足」と答えました。この結果は、患者にとってのためになるだけでなく、医療現場においても大きな意味を持つものです。
今後の展望
日本国内では心不全患者の数が120万人を超え、2030年にはさらに増加する見込みがあります。多くの心不全患者は、退院後1年以内に再入院するケースも多く見られ、そのため家庭での継続的な健康管理が必要不可欠です。しかし、従来の方式では手書きでバイタルデータを記録するため、早期の変化を把握するのが難しいことが多いのです。
今後、オムロンヘルスケアと京都府立医科大学は、このプロジェクトの成果を基に心不全のモニタリングサービスを全国規模で展開することを目指しています。これは患者の再入院率や死亡率の低減に貢献する期待が寄せられています。
教授の洞察
京都府立医科大学の的場聖明教授は、「我々はPHR(個人健康記録)を活用して心不全患者の遠隔モニタリングサービスを検証してきました。今回のプロジェクトで、医療従事者によるフォローアップの重要性も再確認しました。今後もさらなる検証を重ね、このモデルを社会に実装し、心不全治療の新しい可能性を開いていきたい」とコメントしています。
モニタリングの方法や運用の工夫については今後の課題として捉えていますが、心不全治療の改善に向けた一歩となることは間違いありません。
取り組むべき課題
また、今後は看護リソースの確保や運用方法の最適化など、新たなチャレンジにも対応していく必要があります。
まとめ
心不全患者のためのICTを活用した新たな健康管理のモデルは、今後の医療において非常に重要な役割を果たすことが期待されています。興味のある方は、2025年10月開催予定の第29回日本心不全学会学術集会で、最新の研究結果をご確認ください。 複雑化しがちな医療の現場において、こうしたデジタル技術の活用は、患者にとっても病院にとっても大きな福音となることでしょう。