上高地での新たな挑戦
2024年12月から、厳冬の上高地で次世代GPS首輪「LoggLaw G2C」を用いたニホンザルの生態調査が始まります。このプロジェクトは、京都に本社を置くBiologging Solutions株式会社と一般財団法人自然公園財団上高地支部の共同事業です。
プロジェクトの背景
上高地は標高約1,500mに位置し、ニホンザルが生息する特別名勝・特別天然記念物に指定されています。ここでは冬季、気温が氷点下20度を下回ることもあり、世界で最も寒冷な環境に適応した霊長類の生息地として知られています。また、この場所に生息するニホンザルは、厳格な保護が行われており、他地域に比べて人に対して安心して生活しています。
特にこの上高地のニホンザルは、雪深い冬に限られた餌を求めて生活しているため、その生態は非常に特殊です。彼らは、ササや樹皮以外にも水生昆虫や魚を食べるなど、独自の食性を持っています。しかし、観光客による接近が進む中で、ニホンザルの人馴れが進んでおり、これに伴う餌付け行為などの人的影響が懸念されています。
このため、上高地では地域全体でニホンザルの保全活動を続けており、GPS首輪を装着して生態調査を行うことが新たな取り組みとして浮上しました。
次世代GPS首輪「LoggLaw G2C」
Biologging Solutionsが開発した「LoggLaw G2C」は、動物の生態調査と獣害対策のためのGPS技術を応用した製品です。この首輪は、LTE-M通信を利用し、広範囲でのリアルタイムデータの取得が可能です。また、太陽光発電による自己充電機能が搭載されており、長期間にわたるデータ収集が期待されます。何よりも、動物に近づくことなくデータを収集できるため、調査員の負担を軽減し、動物に与える影響も最小限に抑えることができます。
さらに、得られたデータは「アニマルポータル」というウェブプラットフォームを通じて可視化され、直感的に分析できる仕組みが整っているため、ニホンザルの行動パターンを効率的に把握することが可能です。
実証実験の成果と期待
この実証実験の目的は、厳しい環境下でも「LoggLaw G2C」の性能を確かめ、ニホンザルの行動をより詳細に解析することです。これにより、個体の移動データなど重要な情報が収集され、それを基にした適切な野生動物管理の手法が導き出されることが期待されます。
初期の実験では、上高地の過酷な冬でもGPS首輪は安定した動作を確認され、ニホンザルの詳細な位置情報がリアルタイムで把握できることが明らかとなりました。これにより、生息環境の保護や適正な管理計画の策定に資するデータが得られることが見込まれています。
今後の展望
Biologging Solutionsと自然公園財団は、本プロジェクトを通じて得た知見を活用し、野生動物の保護や生態系の維持に寄与することを目指しています。将来的には、ニホンザルだけでなく、ニホンジカやツキノワグマなどの他の野生動物にもGPS首輪の実証実験を広げていく予定です。
このような取り組みは、地域の観光資源を守るだけでなく、生態系全体の保全に向けた新しい道をひらくものとなることでしょう。