岡山大学ががん研究で発見した免疫機構の新しい仕組みとは
2025年1月、岡山大学は周囲の免疫細胞に影響を与える異常なミトコンドリアの存在を明らかにしました。この研究は、千葉県がんセンターや東京大学など、多くの研究機関との共同作業の成果であり、がん免疫療法の効果を弱めるメカニズムを解明する重要なものでした。
がん免疫療法の現状
がんの治療において、免疫療法は注目されています。特に2018年にノーベル賞を受賞した「免疫チェックポイント阻害薬」は、がん細胞を攻撃する免疫系を活性化させる治療法です。これにより、効果を示す症例もある一方、多くの患者には十分な効果が得られないことが多いのが現状です。
この理由についての研究は続いており、岡山大学の冨樫庸介教授を中心とするチームは、その一端を突き止めました。チームは、がん細胞だけではなく、その周囲の免疫細胞にも異常なミトコンドリアの存在を確認しました。
ミトコンドリアの役割とは
ミトコンドリアは細胞内でのエネルギー生産を担う小器官で、独自のDNAを持っています。がん細胞では、このミトコンドリアが異常をきたし、周囲の免疫細胞にもその影響を及ぼすことが知られています。研究結果によれば、がん細胞の異常なミトコンドリアが免疫細胞に移行し、正常な免疫機能を妨げることが発見されました。
このことにより、がん免疫療法の効果が低下することが証明され、治療に対する新たな視点が提供されました。
研究の意義
今回の研究成果は、がん細胞が生き残るメカニズムの新たな一端を明らかにしたものであり、今後のがん治療の新たな手法や、がん免疫療法の適用可能性を評価するマーカーの開発に道を開く可能性があります。
冨樫教授は、研究の出発点について「呼吸器内科医として、薬に対する反応が異なる患者を見てその理由を探ることが動機となった」と語っています。
この研究は、2025年1月23日(日本時間)に著名な科学誌『Nature』に掲載され、その影響は広がることでしょう。これにより、がん治療の現場に新たな展望が開かれることが期待されています。
まとめ
岡山大学の研究者たちによるこの画期的な研究は、がん治療における新たな知見を提供し、今後のがん免疫療法の進展に寄与することが期待されます。がん細胞がどのように免疫系を乗っ取って生存を図るのか、そのメカニズムが明らかになることで、より効果的な治療法の開発が進むことでしょう。