オムロンヘルスケアの新たな挑戦
2025年11月、オムロンヘルスケア株式会社は、心電事業のグローバル戦略を発表し、「Going for ZERO(脳・心血管疾患の発症ゼロ)」の実現に向けた具体的な道筋を示しました。代表取締役社長の岡田 歩氏は、心疾患が世界の死因第1位である現状を踏まえ、心不全パンデミックの危機感を強調し、革新的な技術と戦略的パートナーシップを用いてこの課題に取り組む意欲を示しました。
グローバルな医療課題とは
世界中で心疾患の影響力は増しており、特に高齢化社会に伴い、心不全患者はますます増加しています。米国では心不全患者数が2020年の620万人から2030年には800万人に達すると予測されています。心疾患は、発症前に兆候が現れないことが多いため、早期発見や医療介入が難しい種類の病気です。これに加え、循環器専門医の数が減少しており、医療リソースが不足しているという事実も、心疾患に対する新しいアプローチが必要とされる理由の一つです。
新戦略の概要
オムロンはこれまで、家庭用血圧計の普及を進め、圧倒的な販売数を誇るまでになりました。その中でも、心電図を記録する機能を搭載した家庭用デバイスが多く、高齢化社会における心疾患の早期発見に貢献しています。今後は家庭から医療機関への展開を進めるため、2つの具体的な取り組みを行うことが発表されました。
1. Heartnote®事業の承継
オムロンは日本市場において、JSR株式会社から長時間ホルター心電図検査サービス「Heartnote®」を承継します。このサービスは、薄型かつ軽量で、最大7日間の連続心電図記録が可能です。このようにすることで、医療機関の負担を軽減しつつ、患者にとっても負担の少ないサービスを提供することを目指します。従来の短期間のホルター心電図では見逃されがちだった不整脈を高確率で捉えることが期待されます。
2. インドへの追加投資
もう一つは、インドにおけるAI心電図解析サービスを提供するトライコグ社への追加投資です。インドは心疾患患者が急増しており、特に循環器専門医が極端に不足しています。トライコグ社は、医療機関での心電図データをAIと専門医が解析し、診断レポートを提供するサービスを展開しています。この追加投資によってインドでの心電図検査環境を整え、心疾患による死亡の50%を予防できる可能性を秘めています。
未来へ向けた展望
オムロンは、革新的なデバイスとパートナーシップを通じて、家庭と医療のギャップを埋め、患者中心の医療を提供するために努力を続けます。これにより、「Going for ZERO」の実現はさらに加速していくことでしょう。この新たな挑戦がどのように心疾患の早期発見と的確な医療介入をサポートし、究極の目標に向かって進展していくのか、今後の展開に期待が寄せられます。