京都の新たな希望、南山城村のてん茶工場
2025年5月1日、京都府南山城村に新しく「京都南山城工場」がオープンします。これは共栄製茶株式会社が立ち上げる新たな工場で、抹茶の原料であるてん茶を中心に製造が行われます。近年、抹茶の需要が増す一方で、供給不足が深刻化している中、この工場の開設は日本茶文化の未来に大きな影響を与えるでしょう。
急成長する抹茶市場
抹茶市場はここ数年で急速に拡大を続けています。全国茶生産団体によれば、2023年度のてん茶生産量は4,176トンに達し、過去最高を記録しました。さらに、農林水産省の推進方針にも、てん茶の生産拡大が盛り込まれています。世界中での抹茶人気が高まり、特に宇治抹茶のような高品質なものの需要が急激に増加しているため、供給が追いついていない状況です。
抹茶供給の窮状
高品質な抹茶の需要が偏る中、茶園や荒茶工場の不足が問題となっています。良い品質の抹茶を作るためには新鮮なてん茶の加工が必要ですが、そのための設備が不足しており、農家が収穫したてん茶を無駄にするケースも増えています。これが抹茶供給の不足を招いているのです。
南山城村に誕生する新工場の役割
このような厳しい状況を受け、共栄製茶株式会社が設立する「京都南山城工場」は、荒茶工場としての機能を持ち、年間100トン以上のてん茶を生産する能力を備えています。この新工場が稼働することで、宇治抹茶の安定供給が支えられるだけでなく、有機JAS認証を取得した製品を生産することで、海外からの需要にも応えることができます。
また、京都南山城工場では、一次加工だけでなく二次加工までを可能とする一貫した製造ラインを持ち、さまざまな用途に合わせた高品質のてん茶が生産される予定です。
茶農家の支援とサスティナビリティ
ちなみに、近年の日本では茶農家の高齢化が進み、担い手の減少が問題視されています。ほとんどの茶農家は、収穫した茶葉を自分で荒茶工場に持ち込んで加工しなければならず、大きな労力が必要です。荒茶工場の運営が経済的に負担を強いるため、茶農家が廃業する事例が増加しています。
新しい京都南山城工場では、茶農家からてん茶を購入し、その加工を当社が担当します。こうすることで、農家の負担を軽減し、持続可能な形でお茶の供給を支援することで、地域経済の発展にも寄与します。
最後に
共栄製茶株式会社は1836年という長い歴史を持つ老舗の茶商であり、今後も品質へのこだわりと茶文化の継承に努めます。新工場の開設により、より多くの人々に高品質な抹茶とその文化を伝えていけることを期待しています。新たな京都南山城村の工場が、抹茶市場の未来を切り拓く鍵となるでしょう。