生成AIを駆使した検図業務の効率化 - 矢作建設工業とデータグリッドの取り組み

はじめに

建設業界における生産性の向上が求められる中、矢作建設工業株式会社と株式会社データグリッドが手を組み、生成AIを活用した検図業務の効率化に挑戦しています。今回、240の図面サンプルを対象にした検証では、検図作業がなんと62%も削減されるという、驚異的な成果を上げました。その詳細と今後の展望について迫ります。

検図業務の背景

矢作建設工業は、持続可能な成長を目指し、2021年からの中期経営計画でAIなどの先端技術を取り入れた業務改革に取り組んでいます。特に、建設現場では高度な専門的スキルを持つ施工管理職員が従事しており、彼らが付加価値の高い業務に集中できるよう、定型業務の効率化が急務とされています。そのため、検図業務の自動化は、品質を維持しつつ生産性を向上させるための重要なステップとなるのです。

取り組みと技術

データグリッドは、2017年に設立されたAIスタートアップで、生成AIのパイオニアとして業界に新風を吹き込んでいます。特に、VLM（Vision-Language Model）技術を用いた図面解析AIソリューションにおいては、図面の構造理解や照合を高精度で実現する基盤を持っています。このソリューションは、施工図と構造図の間での整合性確認を自動化し、施工管理職員の負担を大幅に軽減することを目的としています。

検証内容

ユースケース

今回の検証では、施工図と構造図の整合性を確認するためのユースケースが選ばれました。施工管理職員は、協力会社が作成した施工図が元の構造図と一致しているかを確認する必要があります。このプロセスには多くの詳細なチェック項目が含まれており、通常は時間と労力がかかる作業です。データグリッドのAI技術を用いて、このチェック作業を半自動化し、効率を劇的に高めることを目指しました。

検証結果

その結果、生成AIは62%の確信度を持って整合・不整合を判定できることが明らかになりました。この数値は、従来行われていた手作業のチェックを大部分省略できることを意味しています。施工管理職員は、AIが判定した部分に関して新たに確認を行う必要がなくなるため、その分のリソースをより重要な業務に振り向けることができるようになります。

今後の展望

今後、矢作建設工業とデータグリッドはさらなる精度向上を目指し、様々な建筑用途に対応できるように技術の改善を進める予定です。また、照合項目の拡大にも取り組むことで、より多くの企業や現場での実用化を視野に入れています。

関係者のコメント

矢作建設工業の執行役員、黒田健一氏は、「AIの実務適用は建物の品質を担保しながらも、生産性を向上させる重要な一歩です」と述べ、データグリッドの技術が業務に与える影響の大きさを強調しました。データグリッドのCEO、岡田侑貴氏も、「生成AIを活用して建設業界の抱える人手不足の課題を解決するお手伝いをする所存です」とコメントしています。